Laskumise veekeeris (Descent into the maelstrom)

原発推進派に具合の悪い真実:ウラン供給

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原発推進には具合の悪い真実がある。
燃料となるウラン供給の問題だ。「現在の消費レベルで80年は大丈夫なだけの埋蔵量がある」というような説明を耳にしたり目にすることがあるかもしれない。こうした説明はどんな再生不可能な資源についても言われることだが,安心することはできない。まず,「現在の消費レベル」で「埋蔵量」を単純に割るという計算方法は現実的ではない。さらに問題なのは,埋蔵量がすべて掘り出せるわけではないことだ。ピーク以降、鉱産資源は手に入りにくくなり,質も劣り,割高になることはピークオイル問題で既に指摘されている通りだ。

フクシマ以前の2011年1月現在,世界全体では442の発電用原子炉が電力網につながれていた。その設備容量は3億7490万kWh。実際に供給した電力は2009年が2560TWhe(2兆億5600億kWh)で、これはこれまでの最高だった2006年を1000億kWhほど下回る。2007年からの凋落傾向が続いており,2008年に比べると410億kWh減になる。フクシマのおかげで, 特にOECD諸国では原発からの後退、停滞はさらに加速されるかもしれない。

しかし,中国、インド、ロシアを含む非OECD諸国ではフクシマにも関わらず原発の建設ラッシュが進行している。World Nuclear Associationによれば、中国では26基が建設中、52基が計画されているという。その他、120基の検討が行われており,すべてをあわせると198基というものすごい数になる。これらがすべて建設されれば、現在最大の原発国のアメリカを簡単に凌駕するだろう。ロシアでは現在10基の建設が進み14基が計画中、30基が検討されている。インドでは5基が建設中、18基が計画段階にあり,40基の検討が進んでいる。検討中のものまで含めれば,この3国だけで300基以上の新しい原子炉が作られることになる。まさに原発ラッシュだ。これらがすべて建設されたとすれば,現在の発電量の2倍以上の発電量が見込まれ、建設中,計画中のものだけに限ったとしても,現在の6割増になると見られている。原発ラッシュに伴い,ウランへの需要も急増する。国際核エネルギー機関(IAEA)は、ウランの需要は2005年の7万トン弱から2030年には10万トンに増えると予想している。原子炉の数が増えるに伴い,ウランの需要は増えていくが,供給はどうか。

天然ウラン供給に関しては楽観的な見通しが多いが,現在でも世界の原発の燃料として必要な7万トンのうち,鉱山から掘り出されるのはせいぜい5万トンである。鉱山から掘り出されるウランは世界の需要の2/3強しか満たしていない。2009年,ウランの採掘量は前年に比べて7000トン増だった。2010年はほぼ5万3600トン(約3000トン増)。問題なのは,増加のほとんどがカザフスタンからのもので、カナダやオーストラリアなどウラン大国の生産は横ばいが続いていることだ。カザフスタンのウラン生産は2008年から2009年にかけ6000トン、2010年には約4000トン増加したが、これが世界全体の増加とほぼ一致する。オーストラリアは,鉱山が気候変動などの影響を受け,安定した操業ができなくなっている(2010年には前年比2000トン減)。まだカナダも2001年の生産ピークから落ち込みが続いている。しかも,カナダの生産には本来二次供給と見なすべきテイル再濃縮も含まれている。

World Nuclear Associationのデータに基づく世界のウラン生産
グラフはour finite worldから転載

世界の国別ウラン生産についてはここを参照。

天然ウランの一次供給の増加を一手に担い「ウランのサウジアラビア」と呼ばれるほどのカザフスタンだが、その生産はあまり長続きしそうではない。IAEAのレッドブック(2009年版)は、カザフスタンのウラン生産は2015年から2020年には年間2万8000トンで頭打ちになり,その後2025年までに1万4000トンに減り,2035年には5000から6000トンにまで減ると予測している。原発の耐用年数を遥かに下回るわずか20年かそこらの間に、そこまで減ってしまうと見られている。

カナダやオーストラリア,ニジェールやナミビアが生産をあげる可能性はどうなのか。カナダではカナダのカメコ社,フランスのアレバ,出光興産の現地子会社、東電の子会社が出資するシガー・レイク鉱山の開発が進んでいる。フル操業すれば年間7000トンの生産が見込まれる鉱山だが,操業開始は2011年頃とされているが2013年を超えそうで、フル操業となると2016年以降にずれ込みそうだ。ミッドウエスト鉱山も「2010年頃にウラン生産が開始される見通し」だとされているが,操業開始は延期されている。

現在,原発の燃料となるウランのうち,2/3しか鉱山から掘られていないとすれば,残りはどこからくるのか。それは過去の在庫だ。1970年代にウランの価格が低かった時代に蓄えられた民間在庫。もうひとつは50年代から70年代にかけ,東西両陣営で作られた核弾頭だ。

兵器として在庫したウランの切り崩しは、80年代後期の冷戦の終結で核軍縮が進んだ結果だ。ソ連崩壊の混乱のなかで,廃棄の決まった核兵器のウランの盗難や拡散を恐れ、1993年、アメリカはロシアとのあいだに高濃縮ウラン500トンを向こう20年間にわたって買い取る「核兵器解体に伴う高濃縮ウランの処分に関する米国およびロシアの政府間合意」(高濃縮ウラン合意)を締結した。それまでに作られた核弾頭の8割、核弾頭2万発に相当する量が民間の原子炉燃料に転用され、ロシアにはその代償として120億ドルが支払われるというのがこの合意の内用だ。

兵器用の高濃縮ウラン(HEU)には最低でも20%,通常は90%のウラン235 (U-235)が含まれている。これに劣化ウラン(たいていはU-238)やU-235が0.7%程度の天然ウランなどを混ぜて低濃縮し、U-235が5%くらいにして原発の燃料(LEU)にする。この過程で,HEU500トンは約27万トンのLEUになる。1999年から毎年30トンのHEU売却が始まり,09年までに375トン(核弾頭1万5千発相当)が10,868トンのLEUに変換された。これまでにアメリカからロシアには85億ドルが支払われた(米ウラン濃縮会社,USECによる)。

また,アメリカからもこの条約のおかげで不要になった高濃縮ウランが174トン,市場に供出された。米ロ合計、LEU換算34万トンがこの「メガトン(兵器)をメガワット(原発)に」プログラムから市場に放出されたと見られている。つまり,ここ15年ほど、原発の燃料の1/3近くは、過去に爆弾という形でストックされていたウラン(=二次供給)で補ってきたのだ。問題はこのプログラムが2013年に終了することだ。

それ以降,原発ラッシュで急増する需要を満たしていくには,これまで以上にウランを掘り出すか、核軍縮をさらに進めるか、この二つが考えられる。まだ,米ロなどが所有する核兵器には2,000トンのHEUが「在庫」されている。また,世界には「兵器級」のプルトニウムが260トンある(日本には40トン以上)とされており,それらをMOX燃料の「在庫」と見ることもできる。

ロシアは手持ちの核兵器をこれからも整理していくかもしれないが,自国の天然ウラン生産が低迷していることを考えると,まず,自国での消費に振り向けるだろうから、取り出した高濃縮ウランが国際市場には出てこないと見るのが妥当だろう。

こうした供給の逼迫については,資源エネルギー庁も「世界のウラン資源需給の展望と我が国の対応」という2005年の第4回原子力部会の資料でも言及している。その資料が懸念したように、鉱山から新たに掘り出されり天然ウランの量はほとんど横ばいである。

(2005年資源エネルギー庁、第4回原子力部会資料より)

出典】世界原子力協会, The Global Nuclear Fuel Market(2003)、原子力委員会新計画策定会議第5回資料第3号

ただし、この資料の結論は「ウラン燃料安定供給のため、世界的な天然ウランの増産が不可欠」であり、この資料の提言に後押しされるように,日本(企業と政府)は官民一体でカザフスタンのウラン鉱山の開発、検疫獲得に乗り出していったわけだ。それを推進したのが,自民党の原発族の甘利明であり,経産官僚の望月晴文などだ。日本の原発電力会社,原発メーカー,丸紅などの商社もこのカザフにおけるウランの争奪に関わっている(鹿砦社刊『東電・原発おっかけマップ』に詳しい)。こうした「オールジャパン」での取り組みにも関わらず,カザフのウランは原子炉の寿命(30年から40年、最近は60年とも言われる)にも満たない時間で先細りしようとしている。

もし,核弾頭からのさらなる転用がなければ,早ければ2015年頃にはいまよりも2万トン多いウランを鉱山から掘り出されなければならない。そのうち半分はカザフスタン(2015年には2万4000トンに増量の予定)でとりあえずまかなえるかもしれないが,残りはどこからくるのか。原発ラッシュにより需要が拡大していくというのに、天然ウランの生産がそれに見合うようなペースで増えなければ、原子炉はあっても燃料が不足して運転できないというブラックジョークのような状態が出現する可能性もある。

ウラン供給と需要が逼迫してくれば、当然ウランの価格が上昇する。ウランの価格は2011年には50ドル台/1ポンド(約453.6g)U3O8で推移しているが、2000年には10ドル以下だった。2007年6月には136ドルにまで上昇した。

(1980年からのウラン価格の推移)

(出典:http://ecodb.net/pcp/imf_usd_puran.html)

この価格変動の背景にはウランそのものの供給の問題があるほか、ピークオイルのもたらす原油価格の高止まりがある。現在の価格にも、ウラン供給の逼迫を見越した投機マネーの流入が当然あるだろう。IAEAによれば燃料としてのウランの価格が原発の発電コストに占めるのは2割にすぎない。精錬前のウラン価格がたとえ倍になっても原発発電コストへの跳ね返りは6%(OECDの計算では10%)にすぎないと言われている。ちなみに他の燃料源の場合,燃料費が2倍になれば,石炭火力だと発電コストは40%,天然ガス火力なら75%の上昇になる。この数字が正しいにしても,発電コストの上昇はさけられないし、IAEAの計算では考慮されていないが,ピークオイルの文脈で考えれば,発電コストの燃料以外の部分,8割のうち大きな割合を占める運転コスト,発電所や原子炉の建設費は化石燃料の価格に大きく左右される。原発の発電施設や長期に及ぶ使用済み核燃料の安定・維持を原発の「作り出す」エネルギーだけでまかなうことはできない。

2002年には1バレル(159リットル)25ドル前後だった原油価格は2008年には150ドルに迫り,11年半ば現在も100ドル前後で推移している。それを計算に入れると原発発電コストはもっと跳ね上がっていくだろう。

ウランの需要と供給の逼迫,そしてピークオイルが「エネルギー源」であるはずの原発に重くのしかかってくるのはそう遠い先の話ではない。

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